16人の内閣総理大臣と対峙した男 その1

東中光雄衆議院議員は、16人の内閣総理大臣に対する質問に立ちました。

昭和46年07月21日衆議院予算委員会 佐藤榮作内閣総理大臣
東中光雄委員 私が申し上げているのは、現実に起こっているベトナムの戦争、それについては具体的な根拠がなしに、アメリカ側の結論だけで、あれは自衛行動だ、国連憲章による自衛権の行使だということで協力をしているという体制になっている。事実は違うじゃないか。違うということが、すでに具体的な事実として次々と明らかになってきているわけですよ。それは、当時政府は知らなくて――知っとってやっておったと言ったら、これはまさに共犯者ですけれども、知らなかったというのだったら、知らされないような状態の中でその戦争に協力する、あるいはその戦争の補給基地として、あるいは通過基地として、あるいは補修基地として使われてきている。そういう根拠になっている安保条約は非常に危険なものじゃないか。これは政府の立場から見て――私たちの立場から言っているのじゃないです。政府の立場から見たって非常に危険じゃないか。だから、当然そういう問題として、ベトナムの戦争におけるアメリカの実際の行動はどうだったのかということを、政府としては正式にアメリカに追及をし、事実を明らかにする。単にたまたま暴露されたものだけだからというのではなくて、たまたま暴露された問題の中に非常に重要な問題が入っている。日本の安全、アジアの平和にかかわる最も重要な問題、あるいは戦争犯罪への協力者ということになりかねない、そういう事実が入っているのですから、それについて、事実はどうかと当然追及されるべきじゃないか。実質的な立場に立っている限り当然そうあるべきだと私は思うのですが、いかがでございましょう。

佐藤榮作内閣総理大臣 先ほど外務大臣代理からも、その問題についてはワシントンの政府と十分交渉して材料を確かめたい、かように申しておりますから、その点ではそのほうにまかしていただきたい。また、国内において印刷物あるいはビラを刷ったとかどうしたとかいうような点は、いわゆる直接作戦行動の問題ならばこれは事前協議の対象になりますけれども、施設区域の使用、そういうような問題は、これは別個の問題のように思います。別に事前協議の対象にはなっておらない。これはなっておれば、いままでもイエスもあればノーもあるということを申しておりますから、そういう処置がとられると思いますけれども、ただいま言われるように、どうも施設区域を安保のもとで提供しておりますから、その施設区域の使用、これがいわゆる直接作戦行動の問題でない限り、これは自由にある程度使っておる、かように私は理解しております。

昭和48年03月30日 衆議院予算委員会 田中角榮内閣総理大臣
東中光雄委員 最初に総理に、最高裁裁判官の任命に関してちょっとお聞きしたいのですが、いま田中二郎裁判官が辞表を出され、また石田和外最高裁長官が定年でやめられる時期が迫ってきています。こういう中で、その後任の人事、内閣の任命の問題が差し迫った問題になっているわけですけれども、ここで前の法制局長官だった高辻正巳さん、また法務事務次官だった津田實さんが下馬評に上がっておる。こういう状態で、下田裁判官の場合もそうでありますけれども、最高裁の裁判官の任命で、最近行政府の、あるいは行政官として活動してこられた人たちが横すべりしていくというかっこうになっている、そういう傾向が非常に顕著であります。また内閣の法制局長官、ずいぶん長い間やっておられた人ですし、法務事務次官も三年以上もやっていた人です。こういう形で最高裁に行政府から、人事面で最高裁が行政府の出先みたいなかっこうになっていく面が見られますので、こうした任命についての基準をどうお考えになっているのか、この点をお聞きしたい。

田中角榮内閣総理大臣 いま御指摘になったような方々は、まだきめておりません。いずれきめなければならないと、こう考えておるわけでございます。
 最高裁の長官及び最高裁の判事は、御承知のとおり憲法及び裁判所法の定めるところに従い決定をするわけでございまして、特に最高裁の長官、最高裁判所の判事につきましては、その職責の重要なるにかんがみまして、その識見、法律上の素養、その他公正なる判断を期待し得るあらゆる要素を勘案いたしまして、慎重に人選を行なうことにいたしておるわけでございます。

○東中委員 きまってから聞いたんじゃ、これは役に立たぬから、迫ってきておるから聞いておるわけなんであって、高辻さんなり津田さんなりが下馬評にあがっていることは、これはもう司法界でも事実でありますし、こういうものについて、抽象的なことでなくて基準がはっきりしていないと、最近特に行政府から、あるいは行政官だった人が最高裁判事になる、そういう任命をされるのが多いわけでございますので、そういう方向ではいけないという点を言っておるわけですから、その点についてどうかということと、そういうことをやらないということかどうか、その点。それから、最高裁の裁判官の任命についての諮問委員会のようなものをつくったらどうか。昭和二十三年段階ではあって、その諮問委員会の推薦に基づいてやられた、こういう経緯もあるわけですが、そういう諮問委員会をつくる意思があるかどうか、この点いかがでございましょうか。

昭和50年10月16日 衆議院議院運営委員会 三木武夫内閣総理大臣
東中光雄委員 総理にお伺いしますが、いま国民の中で、長い間自民党政治が続いている中で、自民党政府の国会答弁の実態を国民が見ています。そういう中で、自民党政府の国会答弁、大臣答弁と言えば、それはいいかげんな答弁の代名詞のようにさえ使われています。三木内閣の国会答弁も、質問にまともに答えないはぐらかし答弁がある。何を言っているのかわからないあやふやな答弁もある。検討するとか善処するとか言って、実際に何もしない、誠意のない紋切り型の官僚答弁もある。あるいは実行しない空公約の答弁もある。政府委員に任せて答弁を回避する大臣の無責任な答弁、あるいは長々と質問にかみ合わない時間つぶしの引き延ばし答弁さえある。こういうのをいいかげん答弁だと国民が言っているのだと私たちは思うのです。
 そこで、こういうやり方というのは、国権の最高機関である国会の軽視であり、また議会制民主主義を実質的にはじゅうりんしていくような内容さえ持っている。憲法の六十三条の大臣の出席義務と答弁義務、これにも実質的に反していくようなそういう実態になっておる。この青森における仮谷建設大臣の発言は、それを国会答弁のようないいかげんなものではない、国会答弁はいいかげんなものなんだ、ここで言っているのはそうでないのだ、こういう言い方をして、国会答弁のいいかげんな答弁を肯定し、肯定することを公言する、こういう性質を持っているわけです。だから、私たちはこれはきわめて重大な発言である、こう思っておるわけですが、それについて総理はどう考えられるか

三木武夫内閣総理大臣 まあ、しばしば私は言いますように、これは非常に軽率な発言である。三木内閣の国会答弁がいいかげんなものであろうはずはないわけです。われわれは、やっぱり国権の最高機関として、政府の国会答弁を通じて、野党あるいはまた国民の理解を得たいということで、一生懸命に答弁をしておるわけであります。いいかげんなものでは断じてない。それにかかわらず、仮谷発言というものは、これは非常に軽率な発言である、こう考えております。

昭和52年10月12日衆議院予算委員会 福田赳夫内閣総理大臣
東中光雄委員 赤軍を名のっておるいわゆる赤軍派、私たちはこれは暴力犯罪者集団と言ってもいいと思っているわけでありますが、これらの連中がやったハイジャックは全部で三回になっています。御承知のように最初の「よど号」事件、続いて四十八年七月二十日のいわゆる日航ジャンボ機ハイジャック事件、この事件が起こったとき、総理の言われる、鉄は熱いうちに打て、ということだったと思うのです。一月余りで政府が対策要綱を発表しておられます。
 この状態を見てみますと、「ハイジャックを防止するための最も有力な決め手」は「まず武器を機内に持ち込ませない」ことだ、こういうふうに対策の中で言っております。そして、たとえば「持込手荷物検査およびボディ・チェックの徹底」ということを掲げて、「当面東京空港の国際線においては、出発ゲートおよび搭乗ゲートにおいて、二重のチェックを実施することとする。」というふうになっています。また、ほかの項目では、「外国空港における持込手荷物の検査については、各国それぞれの検査制度によって実施されているが、その万全を期するため、日航独自の検査を検討し、実施することとする。」というふうになっています。
 四十八年八月三十一日にこういう閣議の了解決定がなされて四年たちますけれども、今度のボンベイからのあのハイジャッカー五名の乗り込みがもう間違いなしに推認されておるわけでありますけれども、ここではここで言われたようなチェックは全然やられていない。対策要綱で政府が決めて、そして、その決めたことが実施できないことであるのに実施するものとするというふうに決めたのだとすれば、これは無責任きわまるということになると思うのです。実施できることを今度はこの四年間何にもしてなかったということになれば、これは全くの怠慢ということになると思うのです。それで、熱いうちに打つのはいいのですけれども、対策をつくるだけでこういう状態に置かれてきて、今度の最も凶暴な再発といいますか、三回目のハイジャックを許した。私は、これは政府の重要な責任だと思うのです。その責任をはっきりとさせた上で次の対策を決めなければだめだと思うのでありますが、総理の責任及びその決意というものをお伺いしたいと思います。

福田赳夫内閣総理大臣 ハイジャックは今回が初めてじゃないので、ハイジャック並びにこれに類似した事件がいろいろあったわけです。それにかんがみまして、政府におきましては、これの再発防止のための何十カ条という多くの施策を講じたわけでありますが、いま御指摘のありましたダブルチェック、これなんかにつきましては、今回痛感されたところでございますが、実施されておらぬ。つまり外国空港におけるダブルチェックの問題です。これは実施されておらぬ、こういうことを率直に申し上げることができると思うわけであります。今回の事件がそういうところから起こったのか起こらないのか、これはまだ原因分析ができておりませんから、はっきりは申し上げられませんけれども、とにかくその辺にも今後の問題として問題がある、こういうふうに考えまして、これをどういうふうに実施するか、それについて目下協議中である、こういうことでございます。

昭和55年02月09日 衆議院予算委員会 大平正芳内閣総理大臣
東中光雄委員 自衛隊法上は防衛機密ということについての定義もなければ規定もないということは、いまMSA秘密保護法について私は言っているのではないので、その点は認められたと思うのです。
 それで、きのうの新聞報道によりますと、外務大臣法務大臣官房長官ですかが協議になられて、自衛隊関係者の秘密漏洩罪の罰則強化について検討するというような方向を出されたという報道が一部でなされております。それからまた、防衛庁は秘密保全体制検討委員会で自衛隊法の罰則強化の改正を含めて検討する、亘理事務次官がそういう方向を出したというふうにも報道されておるわけでありますけれども、先ほどの総理の答弁では、秘密漏洩罪の罰則強化へ向けての、秘密漏洩罪といいますか、自衛隊法の秘密漏洩の罪の罰則強化を含めて検討するというようなことはないというふうに言われたと思うのですが、その点は一体どうなのですか。

大平正芳内閣総理大臣 いま当面、このスパイ事件の後の処置といたしましては、自衛隊の内部の秘密保持体制の総点検をやるということにいたしておりますことは御案内のとおりであります。それが当面われわれの任務でございまして、政府として、このスパイ事件があったからいま直ちに自衛隊法の改正を国会にお願いするというようなことは考えていないということです。

昭和56年02月16日 衆議院予算委員会 鈴木善幸内閣総理大臣
東中光雄委員 私は、最初に憲法の問題についてお聞きしたいのですが、総理は昨年の臨時国会から、いわゆる自主憲法期成議員同盟のことについてこう言われてきております。この議員同盟は憲法について三原則を堅持しながら憲法の問題を研究調査する、そういう団体と私は心得ておるわけでありまして、私はそういう立場でこれに加盟しておるんだということ、これは速記録に出ておるとおりでございますが、それで私たち、いろいろ検討いたしました。議員同盟の趣意書――綱領にも相当するところでありますが、これによりますと「現日本国憲法は、当時、占領軍によって一週間足らずで作られた英文の憲法をほぼそのまま日本文に訳した「押し付け憲法」であり、しかも日本の歴史と民族の伝統とを軽視した「占領基本法」ともいうべきものであります。」――これは趣意書でなくて、昨年出された会長名の文書に書いてあるわけです。趣意書には「連合国総司令官の指令に基いて作られたものであって、日本国民の自由意志によるものとはいわれない。」こういう規定をしています。日本国憲法が「日本国民の自由意志によるものとはいわれない」、これが議員同盟の憲法に対する見方であり、そこから出発して、押しつけ憲法である、また、占領基本法とも言うべきものだ、さらに、他国の憲法に必ずある国家緊急時の対処規定がないなど、独立国家としての憲法の体をなさないものである、こうまで言っております。
 日本国憲法というのは国民の自由意思によるものではない、だから、この憲法はやめて新しい憲法をつくるんだ、自主憲法を制定するんだというのが議員同盟の趣旨だと思うのですが、総理は、日本国憲法を押しつけ憲法、あるいは自由意思によるものとは言えないというふうな考えを持っておられるのかどうか、その点をお聞きしたい。

鈴木善幸内閣総理大臣 議員同盟は、御承知のように自由民主党の党員諸君が多数加盟をしておる団体でございます。そこで、まず私、申し上げておくのでありますが、自由民主党におきましては、現在、憲法調査会におきまして憲法の問題を調査検討を進めておるということでございまして、まだ、どこをどうするというような結論を得ておりません。憲法調査会で一応の成案が仮にできました段階におきましては、これを総務会にもかけなければいけない。さらに、国の基本法でございますから党大会にかけまして党としての決定がなされるわけでございます。そういうようなことでなければ、自由民主党の多数の諸君が参加しておるこの団体は勝手な歩きはできない、こういうぐあいに私は認識をいたしておるわけでございます。これが第一点でございます。
 それから、この議員同盟のこととは離れて、日本国憲法が押しつけ憲法であるかどうかということについての私の認識を申し上げるわけでございますが、確かにあの当時は占領軍の大きな影響のもとに憲法がいろいろ進められてきたと思うのでありますけれども、最終的には国会におきまして議決、承認をされております。でありますから、一概に押しつけ憲法と決めつけるわけにはいかない、私はこう思っております。