はじめての衆議院本会議反対討論 

東中光雄衆議院議員が、初めて、衆議院本会議反対討論に立ったのは、1970年(昭和45年)4月28日です。

自分の戦争体験から軍国主義復活に断固反対する立場で、自衛隊の増強計画を定めた「防衛庁設置法等の一部を改正する法律案」に反対討論をしました。

私は、日本共産党を代表して、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案に反対するものであります。
 今回の自衛隊増強計画は、アメリカのアジア戦略が、ニクソン・ドクトリンと日米安保条約の実質上の改悪を取りきめた日米共同声明によって、新たな段階を迎えている中で行なわれているものであり、その意味するところは、きわめて重大といわなければなりません。私は、まずこの点を強調したいのであります。

 すでにグアム・ドクトリン以来、ニクソン米大統領やレアード国防長官の諸報告によって示されているとおり、ベトナム侵略政策の行き詰まりから手直しされたアメリカのアジア戦略の基本は、ミサイル迎撃ミサイルや多核弾頭ミサイル配備など、核戦力と米軍の緊急投入能力を一そう強化しつつ、同盟国による戦力の肩がわりを一そう推し進め、その戦争計画にいわゆる同盟国の軍事力を最大限に利用しようとするところにあります。
 これがアジアのいわゆる同盟国をアメリカの核のかさのもとに入れて押えつつ、アジア人をしてアジア人と戦わせようとするアメリカのアジア侵略政策の再編、強化にあることは明らかであります。

 とりわけこのような中で、ニクソン米大統領は、日米共同声明の路線に基づく日米関係の意義を強調して、日本とアメリカの提携関係はアジアにおけるニクソン・ドクトリンの成功のかぎであるとして、アメリカ帝国主義のアジア侵略政策の遂行にあたって日本の果たす役割りに、大きな評価と期待を表明しているのであります。

 今回の自衛隊増強計画は、まさにこのアメリカの新しいアジア侵略政策に積極的に呼応して、日米共同声明のもとで、自衛隊の画期的増強をはかろうとする第一歩にほかなりません。

 本案のおもな内容は、政府の海、空戦力の強化の方針のもとに、艦船、航空機の就役と組織改編に伴い、昨年に引き続いて自衛官の定数を、海上自衛隊において510人、航空自衛隊において474人増員すること、海上自衛隊に新たに予備自衛官制度を設け、陸上及び海上自衛隊予備自衛官を3300人増員すること、さらに、自衛隊の管理体制の強化を目ざして准尉制度の復活をはかることにあります。
この結果、改正後の自衛官定数は25万9000余人、予備自衛官を含めて実に29万5000余人に達するのであります。

 しかも、政府は、今国会の審議を通じて、自主防衛の強化を口実に、自衛隊の作戦区域を日本領域から公然と公海、公空にまで推し広げ、公海、公空での武力排除、制海、制空権の確保、これを公言しつつ、第四次防では六兆円をこえる軍事予算をもって、このような自衛隊の行動に即応する新戦闘爆撃機、艦対艦ミサイルを装備する方針を積極的に明らかにするなど、自衛隊の編成、装備、訓練等の全内容にわたって、侵略的、攻撃的性格を著しく強めようとしているのであります。

 また、兵器の国産化軍需産業の育成強化をはかるとともに、桜田発言に見られるように、憲法改悪への道を大きく切り開こうとしております。しかも、その軍事力増強のテンポは世界最高であり、いまや自衛隊は、アジアにおけるアメリカの反共同盟諸国の中で、事実上最強の軍事力を持つ軍隊にまで強化されたのであります。このような自衛隊の増強を、専守防衛の名でごまかすことは絶対にできません。

 それは第一に、陸、海、空軍その他一切の戦力を保持しないとする憲法第九条をまっこうからじゅうりんするものであります。
それは何よりも、アメリカのアジア侵略政策に事実上組み込まれた自衛隊が、日本とアジアの平和と安全を脅かすものとなることであり、アジアにおける緊張を激化させ、日本人民をさらに危険な方向に導くものであります。

 しかも第二に、これは国民生活に膨大な犠牲と負担を押しつける結果となるものであります。

 第三に、自衛隊の治安出動体制の強化によって、日本人民の独立と平和、民主主義と生活向上を目ざす闘争を弾圧する体制を露骨に強化しようとするものであります。
 こうして、今回の自衛隊増強計画は、安保条約とそのもとにおける日本の軍国主義帝国主義復活を新たな段階に推し進めようとするものであり、日米共同声明に基づく共同作戦体制強化の新たな第一歩となるものであります。

 日本共産党は、自主防衛の装いに隠れて打ち立てられようとしておるこのような対米従属化の軍事力増強と軍国主義復活の危険な策動をきびしく糾弾するとともに、安保条約を廃棄し、米軍基地を撤去させ、憲法違反の自衛隊を解散させ、軍国主義復活政策の主要な拠点をなくして、憲法の平和的、民主的条項の完全な実施を強く要求するものであります。
 以上を強調しまして、私の反対討論を終わります。