天六ガス爆発事故

1970年(昭和45年)3月14日、「人類の進歩と調和」をテーマとした国際博覧会である大阪万博が開幕しました。
その年の4月8日天六ガス爆発事故が起こりました。
大阪市営地下鉄谷町線を東梅田から都島まで延伸する工事で、天神橋筋6丁目(天六)の工事現場で、ガス中圧管から都市ガスが噴出し構内に充満し、大阪ガスのパトロール車のエンジンの電気火花が引火して炎上し、多数の見物人が集まったところで、爆発した事故です。 死者79名、負傷者425名の大惨事となりました。

東中光雄衆議院議員は、当日現場に急行するとともに、衆議院内閣委員会で質問しました。

1970年4月14日衆議院内閣委員会
東中光雄 8日に大阪のガス爆発事件がありまして、私も大阪出身ですので、テレビを見てすぐに飛んで帰ったわけですが、現場の模様は大臣も行かれまして御承知のように、全く戦時中の1トン爆弾が落ちたときの被害のように、現場へ行ってその悲惨さにびっくりしたわけですが、その後ガス爆発の原因あるいはガス漏洩の原因等で対策本部長としておわかりになっておる範囲でひとつ明らかにしていただきたいと思います。

宮澤喜一通産大臣 ああいう事故を起こしましてまことに申しわけないと思っております。原因につきましては、まだ調査が完結をいたしておらないと聞いております。当初500ミリの低圧管のほうからガス漏れがあったというふうに聞きましたが、それはどうも300ミリの中庄のほうではなかったかということを聞いておりますし、それがどういう原因で起こったか、ジョイントではないかということも聞いておりますし、しかしそれが引火した、あるいは爆発したということがどういうことであったか、修理にかけつけましたガス会社の自動車が直接間接に爆発の原因になったのかどうか、疑いの範囲というものはその辺の何点かだということは聞いておりますけれども、最終的なことを聞いておりません。
 
(中略)
東中光雄 いまガス爆発を起こした問題の大阪地下鉄第2号線のあの工事で、いま問題になっている8日の爆発前後1週間くらいの間にあの区域内で起こっておるガス漏れの個所、それから程度について明らかにしていただきたい。

○馬場通産省公益事業局長 これは今度の事故の起こりました現場のもよりの工区におきまして、事故の起こります1週間ほど前からのいろいろな、そういうガス漏れのデータその他につきましては、われわれ新聞等で聞きましたり当事者から聞きましたりしましたが、断片的なもの以外は全体を把握いたしておりません。これはおそらく同時に警察のほうの調査等が行なわれますために、作業日誌その他が警察のほうに行っておる関係上、全体を把握して申し上げる用意はございませんが、いろいろ新聞なりあるいは当事者から聞きました断片的なことでは、当日より3、4日前に同じ地点でガス漏れがあった。それは報告を受けましてすぐ修理をいたしたわけでございますが、そういうことについては聞いております。

(中略)
東中光雄 この工事現場では、爆発したそこから500メートルから700メートルくらい西に行ったところでも、ちょうど大臣がお見えになっているときです、私もそこを通って、ひどいガス漏れで一時引き返そうかと思ったくらい、ガス漏れがありました。ガス会社の人たちがすぐに来て、掘り起こしておりましたけれども、これは私自身が体験したのです。あとあと頭が痛くて往生したわけですが、その個所についてのガス漏れの状況なんかはお聞きになっておるでしょうか。

○馬場通産省公益事業局長 先生が経験をされましたその地点というのは、われわれさだかに承知しないわけでございますが、そのお話に関連しましてわれわれのほうが受けております報告で、あるいはこれであるまいかと思い当たります点は、事故現場から梅田寄りに約300メートル離れた地点に、問題になりました中圧管のガバナーがございます。ガバナーと申しますのは、中圧から低圧に落としますその切りかえのガバナーでございますが、この中にも通常少しガスが入っております。当夜、事故がありまして中圧管のバルブは締めておるわけでございますが、このガバナーにはガスが残っておりますので、爆発のあと始末として事故のあと深夜12時ごろに、大阪瓦斯の作業員がガバナーの中にあるガスを放出したということは聞いております。あるいはこのガバナーにたまっておるガスが放出されるそのにおいのことではあるまいかと思っておるわけであります。

(中略)
東中光雄 対策本部長としての大臣にお伺いしておきたいのですが、この保安監視の体制ですね。そういう資格を持った専門家を、ガス会社だけでなくて、関係施主及び請負業者、建設業者、そこら全体でそういう体制を強化していくといいますか、監視監督体制を強化していく、こういう方向をとられたほうがいいんじゃないかというふうに私は提案したいわけですけれども、その点どうでございましょう。

宮澤喜一通産大臣 対策本部としては、昨晩、先ほども政府委員から申し上げましたように、今後は、工作物についても、保安規程についてもガス会社から通産大臣に案を出させまして、それに対して、要すれば改善命令を出すという形で、他工事の場合にも私どもが了解ができるという体制に直ちにいたそうと思っております。
 ところで、いまのお話でございますけれども、いわゆるガス供給といいますか、都市ガス事業の専門家というのは、ちょっとあってなきがごときものでございまして、導管を布設するとかなんとかいうことになりますと、これは一種の土木工学のほうの仕事になります。それからガスそのものでございますと、これはケミストの仕事になってしまいます。そこで、そういうもののほんとうの専門家というものは、実は、まあ言ってみればガス会社にしかいないということになりますので、いま言いましたようなことは、ちょっと可能なようで、現実にはどうしたらできるかということがどうもはっきりいたしません。それで、要するに、ガス会社の保安要員というものを強化して、工事について注文があるときには、それを工事のほうの業者に遅滞なく言う、こういう体制をとるしかない。どうもそのほうの専門家を独自に養成するということはなかなかむずかしいように聞くのでございます。

(中略)
東中光雄 いまさしあたり50万円ないし20万円の見舞い金が出されておりますけれども、これじゃちょっと少な過ぎてどうにもならぬように思うのですが、その点はどうですか。

宮澤喜一通産大臣 それは最終的に損害賠償の請求になりますのか、あるいはまた板橋事件のようにそういう手続を経て示談になりますのか、それはむろんさだかでございませんけれども、もちろんこの程度の金は一時の見舞いにすぎない。それで話が落着するようなことはとうてい考えられないことだと思います。

東中光雄 では質問を終わります。